はじめての薪ストーブライフ

揺らめく炎が心地よい暖かさを与えてくれる薪ストーブ。石油などの化石燃料ではなく自然エネルギーである薪を利用するため、自然派志向やアウトドア志向の人たちを中心に、最近は静かなブームになっています。
とはいえ、薪ストーブには魅力的な面だけでなく、薪の手配やストーブのメンテナンスなど、手間がかかることも少なくありません。そこで、薪ストーブライフを楽しむために、設置前に正しい知識を理解しておきましょう。

薪ストーブで広がる暮らしの楽しさ

近年は一般的な住まいでも設置する人が増えた薪ストーブ。遠赤外線による輻射熱が太陽のように部屋中を暖め、やわらかい熱が体を芯からじんわりと暖めてくれます。また、火を見てくつろぐといった楽しみも味わえ、調理ができるのも薪ストーブの魅力。ピザや焼き芋、ダッチオーブンを使っての料理など、楽しみ方はさまざまで、スルメイカのあぶりや餅を焼くといったIHではできない楽しみも味わえます。
そして、薪をつくることも子どもにとっては楽しいもの。子どもたちは薪ストーブを通じて火の熱さや危険度を知ることもできます。
こうした魅力により、当初は夫が希望して購入したのに、気づいたら妻が薪ストーブにハマっていた…というご家族も少なくありません。

薪ストーブに欠かせない薪の調達方法

薪ストーブの購入予定者が気にすることのひとつは「燃料である薪の手配が大変」ということ。
薪は自分で原木から薪を作る方法と、販売している薪を購入する方法があります。購入の場合は森林組合や民間の薪販売業者から買うのが一般的ですが、1束数百円と決して安くはありません。家の性能や木の種類によって使用する薪の量は異なりますが、一晩に2~3束燃焼することもあると考えると、薪ストーブは自分で薪を調達できなければ、一般的な暖房器具のなかで最も暖房コストが高い機器と言えるでしょう。
また、森林組合で販売している薪のレギュラーサイズは42cmですが、薪ストーブ本体が40cmの場合、購入した薪をさらにチェーンソーや斧、薪割り機などを使って自分で切断する必要があります。その煩わしさを防ぐためにも、薪のサイズに応じたストーブを選ぶことも大切です。
一方、自分で薪を作る場合、伐採から行う人もいますが、りんご農家が多い長野県であれば、りんごの剪定木をもらって薪にする人も見られます。ただし、薪は加工してから乾燥させる期間(樹種により半年~1年)を要するので、薪を置いておく薪棚など屋根付きスペースの確保も不可欠。なお、森林組合や木材業者が2mほどの薪用の原木(丸太)を販売している場合もあり、それを自分で切断(玉切り)すると、薪を購入するよりコストが抑えられます。

メンテナンスも不可欠

薪ストーブのメンテナンスも、購入予定者の多くが気にすることのひとつです。
基本的に必要なメンテナンスは、1年に1回の煙突掃除(煤とり)。煙突内に煤やタールが付いていると、煙突内の断面積が減少して薪ストーブの燃焼効率を悪くなるだけでなく、不完全燃焼や煙導火災(煙突内の煤にストーブから上がる熱せられた空気が着火し、煙突内が燃える火災)の原因にもなります。
掃除は業者に依頼するのが一般的ですが、煙突自体は単純な構造なので、自分で掃除をすることもできます。ただし、そのためにはあらかじめ掃除口などの設置場所をしっかりと計画しておく必要があります。
なお、最近は二次燃焼(クリーンバーン)といって、薪を燃やして出た煙を再度燃焼することで煤を減らし、煙をクリーンにする構造の薪ストーブも出ています。とはいえ、乾燥していない木を燃やすと煤が多く発生するため、まずはよく乾いた木を使うことが大前提。また、煙突は内部が冷えると煤やタールが内壁に付着するため、保温効果が高い断熱煙突(二重煙突)にするなどの対策も、煙突の煤を少なくするには効果的です。

本体価格と工事の目安

薪ストーブの本体価格はさまざま。高価で高性能な海外の伝統メーカーのものからホームセンターで販売している格安のものまであり、さらに日本では手作りストーブの販売も多いため、バリエーションも豊富です。基本的に海外メーカーのものは厳しい環境基準をクリアしているため燃焼効率がよく、発熱量(kcal)の表示も明確。一方、国産の薪ストーブには規定がないため、おしゃれな雰囲気のデザインなどが選べます。
一般的には30~100万円ほどで、サイズにもよりますが、50万円前後が平均的と言えるでしょう。ただし、ホームセンターなどで10万円以下で販売している、主に中国製や台湾製のものは、燃焼効率が悪いこともあるので注意が必要です。
こうした本体価格に加え、煙突の施工工事には約50万円、薪ストーブを設置する炉台には15万円ほどがかかります。トータルで100万円ほどが平均的な予算と考えておくとよいでしょう。

本体や煙突の設置のポイント

薪ストーブはあらかじめ設置場所や煙突の出し方を決めておかないと、煙突掃除も大変ですし、大気汚染にもなり、不完全燃焼の原因にもなるなど危険性が高いものになります。
設置場所はリビングの一角が一般的ですが、キッチンの近くに設置して料理に使ったり、家の中心に置いて家全体を暖めることもできます。また、最近多いのが、玄関土間での設置。外で濡れた服が乾き、薪を運ぶために家の中も汚さずに済んで、炉台の施工も不要なうえに灰の掃除も楽という利点があります。
煙突の設置は、本体からまっすぐ上に伸ばして家の中に煙突を通す方法と、本体から煙突を横に曲げ、壁側から外に出す方法があります。家の中に通したほうが室内に放熱されますが、屋根に煙突を通す分、施工費が高くなり、雨漏りのリスクも伴います。一方、壁から外に出したほうが掃除がしやすい利便性がありますが、煙突が外気で冷えて内部に煤が溜まる可能性が高まります。そのため、外に多く出すなら断熱煙突(二重煙突)にしたほうがよいでしょう。

そのうえで、家の大きさに適した本体サイズを選ぶことも大切です。とかく大きいサイズを選びがちですが、サイズが見合っていないと、部屋が暑くなりすぎたり薪を多く使って不経済にもなります。
なお、薪ストーブの暖房効果は本体サイズにもよりますが、現代の高気密の家であれば1台で家全体が暖まります。とはいえ、全室を暖めるためには、きちんとした設計計画と、暖気が行き渡るように各部屋のドアを開けておく必要があります。
さらに、薪ストーブで暖められた空気は上昇気流を発生させて上へと押し上げられ、天井付近に暖気が停滞するため、シーリングファンを設置して室内の空気を循環させる必要もあります。

ペレットストーブとの違い

薪はコストや手間がかかるため、最近では、木質ペレットを燃料とする「ペレットストーブ」を選択する人も増えています。ペレットとは、木を粉々に砕いて乾燥させ、圧縮形成したもの。10kg単位で森林組合で販売しており、コストも灯油と同程度です。本体には20kgほどのペレットが入り、燃焼炉に自動でペレットが供給されるので、薪ストーブのように燃え方を見ながら薪(燃料)を供給する必要がありません。また、薪ストーブのように手動で点火する必要もなく、点火、火力調整、消化まで自動制御されます。メンテナンスも1年に1回、背面にあるファンの掃除は必要ですが、煙突掃除は不要。さらに長野県の場合、ペレットストーブを購入して森林組合と供給の契約を結ぶと、10万円の補助金制度も受けられます。
なお、最近は薪ストーブとペレットストーブの兼用型もあります。

設置後に後悔しないために

どんなに暖房設備を整えても、家自体の断熱性能が低ければ暖気は外に逃げてしまいます。本当に効果的な使い方をしたいのであれば、断熱性や気密性など、きちんと家全体の暖房負荷を減らす工夫をすることが不可欠です。
また、家全体を暖房するのか、部分的に暖めるのかにより住宅の設計も異なるので、あらかじめ設計士や施工業者とよく相談しておくことも重要。
そして何より、たとえ週一回しか薪ストーブを使わない環境であっても、火を見て楽しむことに価値を見出せるかが大切です。暖房にはさまざまな種類がありますが、薪ストーブはあくまで選択肢のひとつ。設置後に後悔しないためにも、ランニングコストが高いことも理解しつつ導入することが、快適な薪ストーブライフには欠かせません。